龍の泪 4話
《世界観》
・背景は第二次世界大戦末期(1945年)の3月頃の日本のお話。
・人間の住む世界と龍神達の棲む世界とは同軸。
・竜=西洋竜(翼がある)/龍=東洋龍(蛇のよう)
・人間の姿で生活している。
《これまでのあらすじ》
茜陽と一梅の神社に白妙と綿次郎が訪ねてくる。
白妙は、堕落してしまった己の一の弟子の罰として、御水が濁り、目が見えにくくなっていた。
茜陽は何故弟子が堕落したのか聞こうとしたものの、憔悴している白妙の様子に口をつぐむ。
しかし白妙は、人間の戦争に対して龍神が関与してよいものか悩んでいた。それを茜陽は諭し、様子を見るように収めた。
そして、半人前の綿次郎と共に白妙は帰路についた。
数日後、茜陽は神社を訊ねてきた小夏と出会う。
小夏の家族は戦争によって離れ離れになっており、海軍にいる兄の為の御守りを神社に買いに来たのだった。
茜陽は小夏に龍の御守りを渡す。そして、一梅に白妙の所へ薬を届ける様に頼んだ。白妙の所に薬を届けに来た一梅は、白妙達の棲む川が空襲に遭ったことに気付く。綿次郎は白妙のお陰で無傷だったが、一時記憶障害に陥ることになった。
一方、白妙は空襲の影響で全身に赤黒い痣ができてしまう。一梅が読んだ茜陽が術を使い、痣を半分茜陽に移すことで、白妙は一命をとりとめた。
《登場人物》
白妙(しろたえ)♂
龍年齢:約700歳 人年齢(外見):25~30歳位
川に棲んでいる。生真面目な性格だが、悩み事を一人で抱え込む癖がある。
綿次郎(わたじろう)♂
龍年齢:約300歳 人年齢(外見):14歳位
白妙の二の弟子。正義感にあふれているが臆病で、白妙様は怖い。
弟子になってから日が浅い。
鴇鼠(ときねず)♂
龍年齢:約690歳 人年齢(外見):16歳位
常に微笑み、飄々とした性格。
人を言い包めるのが得意。
一雲(かずくも)♂
龍年齢:約350歳 人年齢(外見):16歳位
白妙の元弟子。冷めやすい性格だが、燃え上がったら誰にも止められない
《用語等》
赤紅(あかべに):茜陽と白妙の師匠。
藍鉄(あいてつ):龍神
白妙♂:
綿次郎♀♂:
鴇鼠♂♀:
一雲♂♀:
下記は兼ね役の際の参考までに。あくまでご自由に。
白妙♂:
綿次郎♂♀・鴇鼠♂♀:
一雲♂♀:
001一雲:シロタエ様、お聞きしたいことがあります。
002白妙:ん?どうした、カズクモ
003一雲:なぜ、人は戦うのですか?昔からそうでした。
戦や戦争を幾度となく繰り返し、その度に人々は「もうしません」だとか、
「もう嫌です」とか、言うではないですか。
004白妙:そうだな。……カズクモ。人間は今何人、この世にいると思う?
005一雲:知りませんよ。知っていたって意味がないですから。
006白妙:ははっ、そうかそうか。
だが、お前も龍神の端くれとして、背負っている命の多さは薄らでも、感じているんじゃないか?
007一雲:そうですね
008白妙:その膨大な量の命は、人間はすべて同じか?
009一雲:いえ、男も女も、子供もいます
010白妙:そうだな。だが、違いはそれだけじゃない。……例えば、赤が好きな人もいれば、青が好きな人がいる。
何が言いたいかわかるか?
011一雲:うーん……。意見の違い、ですか?
012白妙:そう。双方、譲りたくないものがあるが故に、衝突が起こるんだ。
013一雲:譲りたくないもの
014白妙:あと、守りたいものを守るために戦う時もある。
015一雲:……
016白妙:はは、そう難しい顔をするな。お前もじきに理解する時がくるだろう。
017一雲:シロタエ様、シロタエ様。ごめんなさい。
018白妙:かず、くも?な、体が……?
019一雲:ごめんなさい、薬を盛らせていただきました。
あと1時間程すれば、効果が切れて動けるようになるでしょう。あの人を、守りにいきます。
……大丈夫です、僕の代わりに貴方を支える様、ワタジロウに言っておきました。
020白妙:な……
021一雲:こんな夜更けにすみません。もう、お眠りください。……今まで、ありがとうございました。
022次郎:シロタエ様、おはようございます
023白妙:ん……。もうこんな時間になってしまったか。おはよう、ワタジロウ。
024次郎:仕方ありませんよ、まだ空襲でうけた傷が、治ってないのですから。調子はどうですか?
025白妙:痣はだいぶ薄れてきたようだが、まだ体に違和感があるな。
まあ、3日で出歩けるようになったのは、間違いなくアカネのお陰だろうな。
026次郎:そうですね。あ、そのアカネビ様のお薬の事でお伝えしなければいけないことが。
カズウメさんが、後10分程でこちらに薬を届けに来てくださるそうですよ。
027白妙:わかった。そこの煙管(きせる)を取ってくれ
028次郎:はい、どうぞ。それと、後2.3分程で……トキネズ様?がいらっしゃるそうです。
029白妙:はあ……。早く起こさんか、馬鹿者!
030次郎:ひぃ!すみません
031白妙:まったく……。儂は別に、たたき起こしてくれても構わんから、頼むぞ
032次郎:はい……
033白妙:トキネズはこの部屋に通せ。薬の方はお前だけでも大丈夫だろう。いつもありがとう、と伝えておいてくれ。
034次郎:はい、畏まりました
035白妙:それと、飯はいらん。
036次郎:え!?やっぱり体調が優れないのですか?それに、怒られてしまいますよ?
037白妙:誰に?
038次郎:えっと、アカネビ様とカズウメさんに
039白妙:かまわん。受け流しておけ
040次郎:……はい
041鴇鼠:失礼するよ
042白妙:ああ、久しいな。まあそこらに座れ。……40年ぶりくらいか、トキネズ
043鴇鼠:それくらいだったかな。……なんだ、予想していたよりも元気そうだね、シロタエ
044白妙:アカネビが、薬を処方してくれてな。おかげでもう歩けるようになった
045鴇鼠:へえ、アカネビさんが。あの人は元気かい?
046白妙:相変わらずだ
047鴇鼠:それは良かった
048白妙:で、何の用だトキネズ。……見舞いだけではないのは、お前の強張った顔を見ればすぐにわかる。
049鴇鼠:悪い知らせが二つ。どっちから聞きたい?
050白妙:どちらも悪い知らせならば、選んでも意味が無いだろうに
051鴇鼠:はは、そうだね。……じゃあ、分かりやすくいこう。一つ目。西洋の竜たちが、戦争に手を貸すつもりらしい。
052白妙:な!?
053鴇鼠:情報源は君の師匠、アカベニ様だ。
054白妙:む……。師匠は、海に棲む長老達の一員だ。その情報に間違いはなさそうだな。
055鴇鼠:うん。そこでもう一つの悪い知らせ。西洋の竜たちが動き出した原因は、君の元弟子にある。
056白妙:……カズクモか
057鴇鼠:そう。彼が何をしたか知らない訳ではないよね?
058白妙:知っているに決まっているだろう。……そうか。いつかは表沙汰になると思っていたが、間合いが悪すぎる
059鴇鼠:そうだね。で、もう君に一つ話がある。
060白妙:はぁ、何だ?
061鴇鼠:僕たちは戦う事にした。んーまあ、僕たちとは言っても、今は合計3柱(みはしら)しかいないけどね。
062白妙:……どういうことだ?
063鴇鼠:簡潔に言えば、僕たち龍神のなかで勇士を募って、西洋竜たちと戦うんだ
064白妙:は?
065鴇鼠:もちろん、僕たちは媒介が無い限り海まで動けないから、直接的には戦えない。けど西洋竜達は攻めてくる。 その西洋竜達がどうやって来るか考えれば、手段は自(おの)ずからから見つかったんだ。
066白妙:船に、とり憑くのか
067鴇鼠:そう!そこでだシロタエ。君もこの勇士に参加してくれないか?……いや、参加しなくてはならないと思う
068白妙:……ふざけているのか、トキネズ
069鴇鼠:いいや、全く。
……僕はただ、人間たちが、次々と死んでいくのを眺めているのは、飽きただけだよ。
070白妙:……
071鴇鼠:さて、と。僕はもう行くね。手を貸してくれそうな龍神達を、出来る限りまわらなきゃいけないから。
ああ、見送りはいらないよ。君の二の弟子君は忙しそうだし。
072白妙:……ああ
073鴇鼠:そうそう。考えるまでもなく、君が参加すべき理由は明確だよね。
心が決まったら、2日後、19時にアイテツの社で勇士の会合がある。……待ってるね
20161120 修正
20161210 番号・修正
20160409 修正