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龍の泪 3話

《世界観》
・背景は第二次世界大戦末期(1945年)の3月頃の日本のお話。
・人間の住む世界と龍神達の棲む世界とは同軸。
・竜=西洋竜(翼がある)/龍=東洋龍(蛇のよう)
・人間の姿で生活している。

 

《これまでのあらすじ》
茜陽と一梅の神社に白妙と綿次郎が訪ねてくる。
白妙は、堕落してしまった己の一の弟子の罰として、御水が濁り、目が見えにくくなっていた。
茜陽は何故弟子が堕落したのか聞こうとしたものの、憔悴している白妙の様子に口をつぐむ。
しかし白妙は、人間の戦争に対して龍神が関与してよいものか悩んでいた。それを茜陽は諭し、様子を見るように収めた。
そして、半人前の綿次郎と共に白妙は帰路についた。
数日後、茜陽は神社を訊ねてきた小夏と出会う。
小夏の家族は戦争によって離れ離れになっており、海軍にいる兄の為の御守りを神社に買いに来たのだった。
茜陽は小夏に龍の御守りを渡す。そして、一梅に白妙の所へ薬を届ける様に頼んだ。


《登場人物》
白妙(しろたえ)♂
竜年齢:約700歳  人年齢(外見):25~30歳位
川に棲んでいる。生真面目な性格だが、悩み事を一人で抱え込む癖がある。

茜陽(あかねび)♀
竜年齢:約700歳 人年齢(外見):25歳位
神社に棲んでいる。めんどくさがりだが、その神通力はかなり強く、周囲からは恐れられている。
師匠から薬草の知識を受け継いでいる。

一梅(かずうめ)♀
竜年齢:約420歳 人年齢(外見):16歳位
茜陽の一の弟子。生真面目だが、茜陽の事になると盲目になる。
喜怒哀楽が割と激しい。

綿次郎(わたじろう)♂
竜年齢:約300歳 人年齢(外見):14歳位
白妙の二の弟子。正義感にあふれているが臆病で、白妙様は怖い。
弟子になってから日が浅い。

 

《用語》
・御水(おんみず):龍神がそれぞれ宿るもの。この水が濁ると宿っている龍神の身体に異常をきたす。枯れてしまうと龍神は天に還る。

 


茜陽♀:
一梅♀:
白妙♂:
綿次郎♂:


下記は兼ね役の際にご参考にしてください。あくまでご自由に。


茜陽♀:
一梅♀:
白妙♂・綿次郎♂:


001一梅:え?これは……。(走り出す)嘘……まさか!空襲があったのね!?シロタエ様!シロタエ様!?
     ……あ、ワタジロウさん!しっかりしてください!
002次郎:……ん
003一梅:貴方が倒れてどうするんですか!シロタエ様は、シロタエ様はどこに!?
004次郎:しろたえ……さま
005一梅:もう!もたもたしている暇はないんです!このっ!(綿次郎の頬を叩く)
006次郎:いてっ!……あれ、僕?
007一梅:何が起きたかはおおよそ分かります。

    早くシロタエ様のいるところへ、連れて行ってください。ワタジロウさん!
008次郎:カズウメ、さん?……その、ワタジロウって誰の事ですか?僕の名前は……
009一梅:まさか、記憶が無いんですか!?……空襲に遭う前に、シロタエ様が師弟の契りを解いたのね。

    ああもう、シロタエ様はわかるでしょう!?貴方のお師匠様よ!!
010次郎:しろたえ様?
011一梅:そう、シロタエ様!シロタエ様の部屋はどこ!?
012次郎:確か、こっちです。
013一梅:シロタエ様、ご無事ですか!?……ああっ!
014次郎:ひっ!
015一梅:酷い……。至る所に、赤黒い痣があるわ。御水(おんみず)が、人の血に染まってしまったのね。

    ……ワタジロウさん、水盆を貸してください!アカネビ様と連絡をとります!
016次郎:わたじろ
017一梅:ああもう!覚えていないだろうけど、貴方の事よ!ほら早く!
018次郎:は、はい!こっちの部屋だと思います。
019一梅:その水盆、白妙様の御水(おんみず)じゃないでしょうね!

    白妙様の御水(おんみず)は今は使えないわよ!
020次郎:じゃ、じゃあこっちです!

 

 

021茜陽:シロタエ、シロタエ!
022一梅:お師匠様!こちらです!
023茜陽:シロタエ!?おい、しっかりしろシロタエ!う……。この全身を覆うような痣は、やはり……。
024一梅:空襲のせいで、シロタエ様の御水(おんみず)が、血で濁ってしまったのだと思われます。
025茜陽:空襲か。……くそ!
026一梅:お師匠様がお着きになる前に、持たせてくださったお薬を煎じて、飲ませてあります。

    しかし、未だシロタエ様は目を覚ましていないんです。どうしますか?
027茜陽:……
028一梅:お師匠様!?
029次郎:な!?どうしてご自分の腕を切ってるんですか!?
030茜陽:……シロタエ、しろたえ、戻ってこい。頼む!
031次郎:血を、飲ませた?
032一梅:お師匠様!!それ以上は!
033茜陽:五月蠅い!
034一梅:ひっ!
035茜陽:シロタエ。……お前の痛み、私がいくらでも受けとめてやるから。

    気高き龍神、白龍の奥深くに眠りし、太古の力よ。
    その身を覆いし暗き闇を、我に。……っあああ!
036次郎:あ、痣が、アカネビ様に!?
037一梅:……
038白妙:う……。あかねび?
039茜陽:シロタエ?
040白妙:か、かずくも……は?
041茜陽:……カズウメよ
042一梅:は、はい!
043茜陽:この紙に書いてある薬草を、この馬鹿の薬草庫から、取ってきておくれ
044一梅:……畏(かしこ)まりました
045次郎:あ、ちょ!
046一梅:貴方も、一緒に来てください!
047次郎:は、はい!

048茜陽:さて。
049白妙:……アカネビ?
050茜陽:なんじゃ?シロタエ
051白妙:カズクモは?
052茜陽:……お前の一の弟子は、今はここに居らぬよ
053白妙:そうか
054茜陽:大丈夫だ、シロタエ。お前の御水(おんみず)には流れがあるからな。

    ……この痣も、少しだけ我慢すれば流れ落ちよう。
055白妙:ああ
056茜陽:後で私が薬を煎じてやるから、それを飲めば、体を起こせるようになるだろう。
057白妙:ありがとうな、アカネビ
058茜陽:構わん。早く治すことに専念しなさい。
059白妙:アカネ
060茜陽:ん?
061白妙:儂は……儂らは、沢山の人の戦を、戦争を傍で眺めてきた。

    何故人は戦うのだろうと、儂らはずっと疑問に思いながら、眺めてきた。
    今回の戦争で、この国はおそらく……。御国(おくに)のために沈んだ命は報われずに終わる。くそっ
062茜陽:シロタエ?
063白妙:ああ、大丈夫だ。大丈夫。
064茜陽:……だいぶ、容体が落ち着いた頃じゃろう。薬が出来上がるまで眠るといい。
065白妙:そうしよう。……ん?アカネも少し顔色が悪くないか?
066茜陽:き、気のせいだ。
067白妙:そうか?
068茜陽:し、シロタエ!?
069白妙:何だ?
070茜陽:手!
071白妙:握ってもいいじゃないか、別に。減るものでもないだろう?
072茜陽:へ!?減る、いや、その!く、薬が煎じれぬだろうが!
073白妙:お前の弟子は有能だから、大丈夫大丈夫……
074茜陽:なっ!馬鹿者、そのまま眠ろうとするでない!
075白妙:……ん、駄目か?何となく、こうしたほうが落ち着く気がしてな。
076茜陽:はぁ、仕方あるまいな。……寝付くまでだぞ?ほら、さっさと寝ろ
077白妙:ああ、ありがとう
078茜陽:ふん!


20161117修正
20161210番号・修正
20170409修正

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